2009年9月17日木曜日

カサブランカと EU と クーゼンホフ・カレルギー



カサブランカに行って「みつこ」という女性を思い出した。昔NHKで吉永小百合さんが主演した明治の女性ドラマである。ドラマの内容とは「みつこ」さんを通してオーストリア・ハンガリー帝国貴族の崩壊して行く姿と、夫の早逝後の「みつこ」の波乱の一生を描いたものである。
 
時は明治、青山の骨董家の娘に生まれた「みつこ」は日本文化に傾倒していた当時のオーストリ・ハンガリー帝国の駐日大使カレルギー公爵と知り合い正式に結婚し、彼の領地チェコのボヘミアで2人は暮した。
 当時3等国であった日本女性が欧州の政府高官と知り合えば駐在時の慰め物として、それなりの手当と引き換えに帰国時に捨てられるのが常だった時代、正式の結婚どころか現地の社交界でも活躍したとの事。 彼女の素晴らしさが推測出来よう。仏ゲラン社の香水「ミツコ」のネーミングになったほど有名な女性といえば魅力も推測できようか。

彼女の次男がこのエッセイの主人公、誰あろうクーゼンホフ・カレルギー公爵その人である。驚くかもしれぬが彼が最初にEUの概念を提唱した人である。『小さな国は戦争のたびに侵略される。同じヨーロッパ人同士が戦争しないで仲良く出来ないものか。ならば欧州が一つの国になったら良いのでは。』という汎ヨーロッパ思想を提唱する。
 彼の説はかなりの賛同者を得たが、時代はナチス・ヒットラーのゲルマン至上主義の時代。彼のような自由思想はヒットラーにとっては都合の悪いものであり、結局弾圧され逃げまくる事になる。彼は年上の女優と結婚していたが、2人してモロッコのカサブランカまで逃げてきた。この話をハリウッドが映画にしたのがH・ボガード(ボギー)とE・バーグマンでお馴染の『カサブランカ』である。これから先は女性達とお茶する時の会話ツール。

映画の主題は男ボガードの優しさであろうか。ボギーはある日、自分の経営するカサブランカのカジノクラブ兼酒場に逃げてきた昔の恋人バーグマンに再会する。彼女は夫とアメリカに逃げようとしてカサブランカまで逃げて来た。そこで再会した2人は揺れる。しかし彼女には夫がいた。
 しかもその男はあまりにも立派な男。ボギーはジェラシーも手伝い、2人の脱出を最初は邪魔をする。ボギーは当然のごとく女に迫る。女も縁りを戻そうとする。しかしボギーは冷静になって自分と連れの男を比べる。そしてこの瀬戸際でボギーは本当の男の優しさを出す。  
 「俺みたいなヤクザな男と暮すより、この女の本当の幸せは?」。そこでボガードは熱くなっている女に冷たく言い放つ。「お前はあの男と行きな」。女は目で言う「なぜ?」ボガードも目で。「俺みたいな男よりお前にはあの男の方がふさわしい」。ここがこの映画の見せ場。ボガードは寂しさを体全体で表わしながら彼女を飛行場で見送る。なんとも良い映画でした。
 少し私の脚色が入っていますが大筋はこんな所でしたか。

さてバーグマンと一緒にモロッコに逃げて来てドラマを作って去って行った地味な男こそ主人公カレルギー氏のモデルとなった男です。尤も悪役ボガードが主役だったので映画の中ではカレルギー役の俳優は影が薄かったが。
カサブランカに行くと映画の中でボガードが居たと言うモデルのバーが有るが、撮影は全てハリウッドとの事。
 
現地に行くと映画の中の埃っぽい感じは全くない。近くに砂漠はない事に皆驚く。砂漠はずっと南の果てまで行かないと出てこない。アトラス山脈を越えてから、しばらくしてやっと砂漠は出てくる。
 そうです、この国は海水浴が出来る、スキーが出来る、砂漠も有る、おまけにアラーの神が居るというとても面白い国なのです。 フェズやマラケシュ辺りに行くと気が狂うほど強烈な印象を受ける。本当の旅好きはこんな国がお奨めかもしれぬ。

話を戻すが、何かの拍子に女性達とEUの話でも出たら、ここで「みつこ」さんの話をしてさりげなく貴君の教養を見せてはいかがか! 深夜のTVなどで「カサブランカ」をやっていたらチャンス。彼女にビデオを薦め、知的サイドから彼女に迫るというのは如何なものだろうか。

悪役が似合うボギーだったら、次の様に渋く言うかな。
『男と女の事?ごちゃごちゃ言うんじゃないぜーベイビ』
「そこでボギー、女を荒々しく抱きよせる」 カット。  今日の撮影これまで。

0 件のコメント: