2010年11月15日月曜日

トレドの魅力と素晴らしさ

スペインの首都マドリッドの滞在日数が少なければ「マドリをスキップしてもトレドを見るべし」などとよくガイドブックに書いてある。下手なガイド氏や普通のガイドブックではトレドの魅力が伝わり難いので今日はその魅力を2つほど。 (左の写真は現在のトレド全景)








まずトレドに行くと三方をタホ川に囲まれたその独特の地形に目を見張る。川側に面した部分が崖になっているので陸側部分に厚く壁を作れば籠城に強いということで、古くはローマ時代から重要な軍事拠点として栄えてきた。

  色々な民族が王朝を立てたがこの地形にプラスしてイベリア半島の真ん中ゆえかドイツ系のゴート族の王朝や今のスペインの元を作ったイサベラ女王の時代からはここが長く首都として使われていたとの事。マドリよりもずっと歴史があるのでマドリよりトレドの方が見るべきものが多いということだ。本当に狭い道を歩くだけでも楽しい。歴史を一歩一歩踏みしめる感じは何ともロマンを感じる一瞬である。



「「注:イサベラ女王とは15世紀カスティリア王国の女王であり隣のアラゴンの王と結婚し結束した力で最後に残ったグラナダ王国のアラブ人を追い出し今のスペインの基礎を作った人としてスペインでは誰知らぬ者はいない。また彼女はコロンブスのスポンサーとしてスペインの黄金時代の基礎を作った女王でもある。」」



(右上の写真:トレドの大聖堂 右下=トレドにある世界の三大名画の1つ:オルガス伯爵の埋葬)





そのトレドの古さを物語る事例を2つ述べよう。1つはプラド美術館の中にあるエル・グレコの絵である(左の絵)。その絵はトレドの全景が描かれているのだが、今ツアーで行くとバスでトレドの全景を写真に収める所へ行くのだが、その写真が500年前のグレコの絵とほぼ同じというのに度肝を抜かれる。木の文化と石の文化の違いを感じる一瞬であろうか。



もう一つはガイドからのエピソード:アメリカ人の学生ツアーで来たあるユダヤ系アメリカ人女性のお話。

<<彼女が観光後ホテルで感極まってずっと泣いていたのを不思議に思った同部屋の女性が訪ねたところ、なんと彼女の家に伝わる先祖代々の地図と鍵が500年前のトレドの地図と鍵であり、それが今のトレドの番地と合っており、しかもその門の鍵と合致して扉が開いたとのこと。この出来すぎた作り話のような話が同部屋の彼女のスペイン人の知り合いから知り合いに伝わりそれが新聞にまで載ったとの事。>>

つまり泣いた彼女のご先祖様はイサベラ女王がスペインを統一し、非キリスト教徒のアラブ人とユダヤ人を追い出した時代に逃げ出したユダヤ人家族であり、今は回りまわってアメリカに在住しているという訳である。トレドの古さを物語る話であるがユダヤ人の執念にも驚く何とも面白い話ではないだろうか。

国連のパレスチナ決議のように「昔のユダヤ人の土地を返せ」などといえば世界中でこのトレドのような話がゴロゴロ出てくるだろうが、ヨーロッパ人はきっと次のように言ってユダヤ人には入らせないであろう

「俺はユダヤ人が来る前のゴート人の子孫だ、だからこの土地は俺達のもの。お前らには渡さないぜ」てな調子ではねつけると、どっこい今度はイタリア人が出て来て
「俺達はゴート人より前にここを支配したローマ帝国の子孫だぜ。お前らこそ退きな」てな具合。

おっと忘れていた。ゴート人の後にはイスラムのアラブ人が支配していたな! 延々と続きそうなので今日はここまで。
この古さがヨーロッパの歴史・文化の魅力を感じさせる所であり面白い所であろうか。