2009年9月21日月曜日

パリのカフェにて






パリを旅するとちょっとした事で驚く事があるが、その中の一つにカフェの横並席が有る。勿論向かい合わせ席も有るが、有名なカフェほど横並びが多い。何時間座っていても追出されないので、のんびりと時を過ごすにはお勧めの場所である。道行く人を眺め、逆に眺められる場所といってよい。

色々な人を眺めるのは結構楽しい物である。オープンカフェでお洒落な女性と2人で、道行く人から眺められれば、舞台上の役者の擬似体験が出きるというもの。つまりお茶を飲む二人は道行く皆に眺められる役者であり、道行く人達を眺め返す観客でもある。
 一種の舞台の役者と観客の関係と言って良いだろうか。なんともヨーロッパ的であり、お洒落ではないだろうか。

軽く食べる時などは、椅子を少し動かすだけで二人の世界が作れるのもうれしい。なんといっても横並びは女性を口説く時にも都合がよい。まっすぐ女性の顔を見なくて済むので照れ屋には口説き易い。無意味に場を繕うためのタバコも要らない。本当に好きだと告げる時だけ目を見れば良いのであって、そんなに長く見つめ合わなくて済むので気が楽だ。
 向かい合せだと会話が途絶えるのに御互い気を使うが、横並びだと何故だか沈黙でも間が持てる。
道行く人を眺めながら、次の会話の作戦が練れる。

なぜか正面で女性の目を見ながら口説くと、私の場合大抵は疲れて失敗した。自身タバコを吸わないので間が取れず持て余すのかも知れぬ。色々繕おうとして、つまりへたな会話でカバーしようとして失敗したのだと思う。黙って見つめるだけで惚れられるタイプでもない男のつらいところであろうか。
 日本にも横並びの喫茶店がたくさん出て来て欲しいのだが。長く座られると回転が悪い故か、スペースの問題か、見たり見られたりが苦手な民族なのか、リサーチの資料でもあれば見たいものである。

パリのシャンゼリーゼでお茶をする機会があったら、凱旋門近くの「カフェ・フーケ」をお薦めする。「仏映画アカデミー賞」の選考会がこの上のレストランの中で行われるという格調高く値段も高いカフェである。
 そう女優バーグマン全盛時代の古い映画「凱旋門」の中に何回も出て来るあの店である。中に入ると壁に掛かる映画スター達の写真を見るだけでも価値があるが、席はやはり外の道路沿いに座り、町行く人を眺めながらのお茶を勧める。
 風月堂もこの店の名前フーケから取ったとガイド達が言う赤いテントで有名なカフェレストランである。

同じパリでも現地人をのんびり眺めるには、サンジェルマン・デ・プレの「カフェ・ドゥ・マーゴ」「カフェ・フロール」の方がお奨め。ただここは同性愛の人が多いので予備知識なくフラリと入らない方が無難かも。この辺のカフェーから実存主義や古くは啓蒙思想などが生まれたと言っても過言ではない所である。
ボルテールやデカルトのような大思想家達も書斎から出て、このカフェで頭を休めたり、道行く人を眺めながら色々と思索したのではなかったろうか。勿論お盛んな先生達ゆえ愛人との逢引に使った事は間違いないと思われるが。  
 現代の有名人ではサルトルやボーボワール、F・サガン、カミュ達の溜り場だった所と言えばお分かりだろうか。 ちょっとインテリ風な気分でお茶をするならここであろう。

日本人もこのようなカフェで道行く人を一日のんびり眺めながら余裕の時間を過ごせるようになれば高邁な定理や思想もたくさん生まれ、ノーベル賞をもらえる先生方も増えること間違いない。
 最後はパリゆえデカルト先生に敬意を払って決めて見たいが。私の様な凡人には次のような定理になってしまう。
『我(一日マドモアゼルを眺め)思う故に(Hな)我有り
今日の落ちは少々難解すぎたか。
この諺が分かるなら貴方のインテリ度はかなり上です。

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