2009年9月22日火曜日

レオナルド・ダ・ビンチと最後の晩餐。



ミラノに行くと必ず見る観光スポットがある。サンタ・マリア・デル・グラッチェ「マリアさん・ありがとう」教会である。というよりはレオナルドダビンチの「最後の晩餐」の壁画がある教会と言った方が馴染みか。       
 500年程前ミラノの中心部にある教会の付属修道院の食堂壁にレオナルドによって画かれている。題のごとくキリストが死ぬ前日に12人の弟子と食べた最後の晩餐が絵のテーマである。

その絵は当時流行のフレスコ画法ではなくテンペラ画法で描かれている。その画法とは絵の具の顔料を卵で溶き、乾いた壁やキャンパスに描く方法である。今でも画家達が使う画法の1つだが、フレスコ画よりはるかに色鮮やかであり、今のような絵の具が無かった当時としては最高の画法であったろう。
 話それるが当時流行のフレスコ画とは、漆喰壁が乾く前にすばやく壁に色を置く手法である。乾くと何年経っても色落ちせず長持ちするがスピードが要求される。ちなみにフレスコとは英語のフレッシュにあたるイタリア語である。

レオ君は仕事が遅い上に、幾らお金を貰っていようが、他の事に興味が湧くと、それらに熱中してしまう性格の為か、晩餐の壁画はゆっくり描けるテンペラ画法で描いた。また話がそれるがレオナルドが頼まれた仕事を放っぽりだして熱中した仕事といえば大砲、機関銃、戦車、飛行機などの制作である。

さて壁画に戻る。食堂の壁に描かれたということで調理熱のせいなのか、画面上の卵の蛋白質の付く微生物のせいなのか、詳細は分からないが、描き終わるとすぐ傷み始めたとの事。その上2次大戦の米軍爆撃で天井に直撃弾を食らい3年も雨ざらしの状態にあったという悪条件が重なり、オリジナルの素晴らしさから離れてしまった。
 
NHKの修復模様をみると今回の洗浄作業で過去の画家達が上から何回も書き加えた様子がよく分かった。20年以上掛けて洗っている“のんびり”さにも驚いたが、新たに出てきたレオナルドのオリジナルの綺麗な絵にはもっと驚かされた。
30年前の洗浄時に見たときは暗かったせいか全体が黒っぽく見えたが今は全体的に色が薄く見える。
この絵で私が一番感激したことは、評論家達の「絵のウンチク」ではなく横に置いてあった一枚の写真であった。それは2次大戦の爆撃で壊されたこの教会に土嚢を積み上げ、残った壁画を必死に守るミラノ市民の写真であった。 詳しく言うと真中が吹き飛ばされた修道院・食堂部分の残った2枚の壁(この壁の1枚に晩餐の絵が有る)の絵を守ろうと市民達が土嚢を組んでこの壁画を守っていた写真だ。
 イタリア人の歴史好き、文化好き、芸術に対する心意気である。この辺にイタリア人のすごさと言うか素晴らしさを感じた。(現在ではこの写真はもう無い)

もしミラノに行く機会が有ったら、これは必見。但しこれを見るには日本からの予約か、これを見るツアーに入らないとみられない。もっともイタリアの事、キャンセル待ちという手もあるが、10分見るのに1時間~2時間も使う時間の余裕が必要。
 蛇足だがミラノは仕事には良い所でも観光では今一つの町かも知れぬ。観光の中にミラノが入っているなら別だが、日程に限りが有るならベニス、フィレンツェが入っているツアーを選ぶべき。それほどイタリアは奥が深い。 

ところでこの壁画は女房連れの時、ミラノのブランドファッション店から貴方の奥方の目をそらせるには格好の口実として使える。大方次のような会話になるのが落ちだが!。 
『お前が見たいと言ったから予定に入れたのに、買い物の為に抜けるのか。俺はなんとしてもこの絵を見るんだ。このまま行って見る。買い物に行くならお前一人で行きな。』
本当に行きそうだったら、もう一押し。『ミラノは結構日本人がドロボーの被害に遭うらしいよ、気を付けろよ。』
それでも奥方の方が語学は出来るは、度胸は有るは、なんて言う人は諦めて高い買い物に付き合うのですな。 
       「グッチで愚痴ってグッチャグチャ」 では次回    

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